【最新更新日　：　2023年04月07日 金曜日　】

２０２２年の読書履歴（№37）

★ 評価は、私の独断と偏見でつけたもので、読んだ時点で「ん、これは良かった！」と思った本です。 　　本そのものの良し悪しとはまったく関係ありません。☆はイチ推し、◎は、おすすめの本です。

№	了月	書 籍 名	著 者	出版社	評価	コメント＆抜き書き
37	22.11	日本外交はなぜ朝鮮半島に弱いのか	佐藤勝巳	草思社	◎	第1章　日本政府は「不審船」を引き揚げられるのか ●外貨が入ってこない！ ・日本国内で流れている覚醒剤の六〇～七〇パーセントは北朝鮮産であり、しかも純度が高く「良質」と評価されている「商品」だという。 ・北朝鮮経済は一九八〇年代から日本経済に従属するようになった。 ・バブル経済時代、総聯傘下の商工人は税金を納めず大儲けし、金日成・正日父子に信じがたい額のカネを献金してきた。 ・北朝鮮が原爆の原料の一つであるプルトニウムを大量生産することができる黒煙減速炉を本格的に稼働させ、その生産に入るのは一九八六（昭和六十一）年からであるが、これは日本のバブル経済のはじまりとほぼ軌を一にしている。 ・経済だけではなく、核ミサイル関係のハイテクのハードとソフトのほとんどが日本から北にいっている。 第２章　朝銀はいつから「治外法権」となったのか ●元総聯老幹部の嘆き ・総聯は日本のメディアがかれらの気に入らない報道をすると、大衆を動員して報道機関に「暴力的な抗議」をし、営業妨害を働いてきた。 ・だが、当の言論機関も警察も、これを刑事事件にしなかった。その結果、一部に例外はあるものの多くのメディアは、金日成・正日父子の独裁政治や人権蹂躙に目を覆い、批判することができなくなった。日本人が北朝鮮に拉致されているのに関心すら示さなかった。 ・一九六〇年代ごろから、わが国では北朝鮮・総聯への批判は完全にタブーとなったのである。総聯や朝銀が「治外法権」とうそぶくのも、必ずしもハッタリとばかりはいえない現実があった。 ・東京朝銀幹部逮捕のとき広く報道された「仮名・借名口座」問題であるが、これは、東京朝銀が実在しない人の名前や他人の名前を借りて口座をもうけ、これらの人たちにカネを貸し付けたことにして、口座にカネを振り込むものだ。 ・破綻した日本の信用組合や銀行で、これほどでたらめなことをやっていた金融機関はない。 ・長銀は日本の法律を公然と無視し、それを「治外法権」といって自慢にしてきたのだ。 ・他方、日本当局は長年その違反を知りながら取り締まらなかった。となると、まさしく長銀は実態としても「治外法権」の信用組合であったのだ。 ●朝銀は朝鮮労働党の下部組織 ・全国にある朝銀は総聯が所有している信用組合である。金正日政権の下部機関である総聯は、日本の国税当局に圧力をかけ、税金を納めず、朝銀には「仮名・借名口座」をもうけ、資金を総聯＝金正日政権に集めていた。 ・共産主義を唱えている国家にあっては、政府をはじめあらゆる組織を共産党が指導している。 ・総聯も裏では「学習組」という共産党組織〔＝朝鮮労働党。実態は、金正日国防委員長の私党〕が指導している。 ・朝銀も「学習組」の指導下にあるが、日本の安全を日本国内から脅かしているのは総聯ではなく、この「学習組」という名の朝鮮労働党である。 ・それは朝銀その他をへて北へ流れたカネがどう使われたかをみれば明らかである。 ・金日成・正日父子はそれらを自分たちの贅沢な生活と遊興費にあて、つぎに核ミサイル開発費に、そして韓国を赤化統一する工作費に使い、国民を餓死させた。しかも、できあがったミサイルを、一度は日本海、二度目は太平洋の三陸沖に撃ち込んで来た。 ・これをかれらの側からみると、日本という「敵」から奪った武器で日本という「敵」をやっつけるというゲリラ、またはパルチザン戦法がまんまと成功したということになる。 ・それなのに日本政府は、日本を敵視している朝鮮労働党傘下の朝銀が破綻したからといって、二度にわたって合計六千億円の血税を贈与したのだ。 ・わが国はいまや、自分の手で自分の首を絞めているという自覚すらないとしかいいようがない事態にある。 ●「法律は破るものである」 ・総聯傘下の商工人は、いかにバブル期とはいえ、億単位いや数十億円もの献金がどうしてできたのか。 ・結論を先にいえば、ほとんどの商工人が朝鮮商工会と税務署との「団体交渉」の結果、税金を納めていないからである。 ・総連傘下の商工人は極端ないい方をすれば、金日成・正日父子に忠誠を示すには、日本の法律を破ってでもカネ儲けをし、多額の寄付をするのがいちばんだと考えている。 ・法律は守るものではなく破るものだという考えは在日一世たちに顕著にみられる傾向である。 ・このような意識が生まれた背景には、韓国や北朝鮮では法律は万人平等に適用されるものではなく、社会的地位によって摘要の範囲や程度がちがっていたことがある。 ・いまでも韓国では法律が適用されるのではなく、地位の高い人ほど法律に拘束される率が少ない。一般国民には過剰に法が適用される。 ・ワイロを使えば行政手続きは容易だが、使わないと手続きは進まない。カネで簡単に法は動く。 ・当然のことながら、こういう社会関係のなかでは、法は守るものではなく破るものという考えが醸成されてくる。 ・このように朝鮮半島には日本とまったく異なる歴史と文化があるのだ。 ・法律無視、公私混同という点で南北は共通している。 ・総聯はみずからの力を誇示するためか、総連傘下の朝鮮商工会と国税庁のあいだに「税金に関する合意」があるといい、一九九一（平成三）年、『朝鮮総聯』という冊子にこれを公表している。 ・日本国民は個々人が税務署に所得を申告する。しかるに合意の第一項目は「朝鮮商工人との全ての税金問題は、朝鮮商工会と協議して解決する」という内容である。 ・べつな視点からみると、かれらがいかに主観主義的であるか、そして日本社会で法律を守らないことでどんなに信用を失うかということを知ろうとしない好例でもある。 ・あげくのはてに、総聯中央本部への強制捜査が「民族差別だ」などと見当はずれの避難をしているが、時代錯誤もはなはだしい。 ●日本の政界工作に使われる ・朝銀破綻にはいま一つ特殊な事情が存在している。 ・各地の朝銀から総聯中央に吸いあげられたカネはすべて金正日政権に流れたのではなく、総聯自身が使うほか日本の政界工作にも使われていたのだ。 ・その使い先は、 　（一）日本にある主体(チユチエ)思想研究会への資金援助。「よど号」ハイジャックの実行犯の妻の多くはこの組織の出身者だ。 　（二）実体は韓国を赤化統一するための国際統一戦線組織「朝鮮の自主的平和統一を支持する会」への資金援助。元総評事務局長岩井章氏が長く責任者をつとめていた。 　（三）旧社会党・総評など幹部の買収費。 　（四）自民党幹部への政治資金提供。 　の四つに大別することができる。 ・バブル期には、自民党派閥の長クラスへの献金はだいたい一億円が相場であった。 ・かつて北の地下工作員であった故張龍雲氏は、自著のナカデ「カネを持っていって断った国会議員は一人もいなかった」と書いている。 ・北朝鮮の思うとおり働いてもらうために総聯が日本人にカネを使いだしたのは、朝鮮戦争直後、日本共産党支配下にある左翼団体にたいしてが最初である。 ・社会党主流にカネが動きだしたのは、一九七〇（昭和四十五）年、朝鮮労働党が日本の窓口を日本共産党から日本社会党に乗り換えたときからである。自民党議員に本格的にカネが流れだしたのは、金丸訪朝のときからである。 ・政治化への献金については、政治資金規正法第二十二条の五によって、国会議員は外国人から政治資金をもらうことを禁じられている。 ●二年八カ月で三千億円が消えた ・一九九七（平成九）年五月、全国の朝銀のなかでもっとも早く破綻したのは大阪朝銀だった。その一年後、預金保険機構は受け皿となった近畿朝銀に三千百億円の公的資金〔税金〕を贈与した。 ・近畿朝銀の営業範囲は、京都、滋賀、和歌山、奈良、大阪、兵庫に及ぶため監督官庁は、大蔵省・近畿財務局に移った。 ・しかし、近畿朝銀は、二〇〇〇（平成十二）年十二月二十九日債務超過に陥り、二次破綻をした。二年八カ月で三千百億円という巨額が消えてなくなったのである。 ・二次破綻から一年たった二〇〇一年十一月二十二日、衆議院西村眞悟議員は政府にたいして「朝銀信用組合に対する公的資金投入に関する質問主意書」を提出した。 ・そのなかで西村議員は「近畿朝銀がすでに三千百億円の公的資金を得ながら、二年八ヵ月後に破綻した原因は何か」と質した。 ・これにたいして政府は、管財人の報告によればとして、「合併前の旧朝銀京都信用組合の貸し付け審査が不十分であったことと特定貸し付け先に限度額を大幅に超える貸し付けがなされ、加えて、信用組合内部での相互監視機能が作用せず、不適切の経営管理が行われていたことが主な原因」だと答えている。 ・西村議員はさらに「近畿朝銀は二年八ヵ月で破綻したが当時監査は十分だったのか不十分だったのか。仮に不十分ならどのような不十分さがあったのか」と質した。 ・これにたいして政府は、近畿朝銀の合併に参加した各信組の当該府県の監査をふまえ、大阪府知事の要請で三千百億円をだした。しかし、京都朝銀を監督していた「京都府による監査は……同信用組合の不適切な経営管理により生じた不良債権が掌握されていなかった」と答弁している。 ・わかりやすくいうなら京都府の監査はでたらめだったということだ。 ・さらに政府答弁は、三千百億円をだした根拠を「各府県の監査結果をふまえて」と、こともなげに書いているが、各府県で信組を監査している職員で、帳簿をみて不正を発見できる地方公務員はかぎりなくゼロに近い。なぜならかれらは地方公務員試験に合格した人たちであるというだけで、帳簿の見方など知るはずもない。 ・そこで地方自治体は、自分たちが監督する信用組合が刑事事件などを起こしたときは、当該地方を管轄している大蔵省財務局にいるプロの調査官に監査を依頼している。 ・例外はあるかもしれないが、地方自治体に信用組合を監査する能力はないのだ。 ・西村議員の「破綻した朝銀の原因は何か」という問いに、答弁書は管財人の報告として、貸し付けにさいしての「審査管理体制が不十分」「法令順守体制に問題」「特定与信（貸し付け先）への集中」「理事会、幹事などの内部の相互牽制（監視）が機能しない」などが共通して指摘されていると書いている。 ・朝銀が金融機関としてすべての適性を欠いていたことは素人目にも明らかだ。 ●「面倒みてやれ」のひと言で贈与が決まる？ ・金融庁や預金保険機構は調査能力のない地方自治体の監査を「ふまえて」三千百億円の公的資金を近畿朝銀にだした。 ・「金融再生法」第八条には、破たんした金融機関には管財人を派遣することが定められている。二〇〇〇（平成十三）年五月、金融再生委員会は国会答弁で、「地方自治体がすでに監査しているので、再度国が監査する必要がない」といって旧大阪朝銀への管財人派遣を拒否した。金融再生委員会が地方自治体に調査能力がないことを知らないはずがない。知りながらこんな答弁をする。 ・すなわち「公的資金」で助けることが絶対的な目的だったということであり、カネをだすのに都合の悪い事柄は極力避けたいという意思がうかがえる。 ・破綻した大阪朝銀幹部は身近な人に「あんな無茶苦茶なことをやっていたのだから逮捕はまぬがれない。そうなったら覚悟を決めて『いわれたとおりやったまでだ』と真実を語る」といっていたと聞く。しかし、いつまでたっても逮捕されず、逮捕状ではなく三千百億円のカネが来た。 ・なぜこんなことになったのか。当時、総聯幹部は「三千百億円は野中さんの『面倒みてやれ』のひと言で決まった」といっていた。 ・大阪朝銀破綻の三ヵ月後、一九九七年八月のことである。日朝交渉再開の「環境整備」と称して北京で北朝鮮在住の「日本人妻」里帰りの問題をめぐって外務省の審議官級の会談が開かれた。このとき日朝交渉再開実現をめざして精力的に動いていたのが、当時自民党の幹事長代理だった野中広務氏である。 ・もしも大阪朝銀を救済しなければ、全国の朝銀が連鎖反応で破綻してしまう。そうなれば日朝交渉推進どころの話ではないと野中氏は考えたのであろう。 ・野中氏の立場からすれば、「面倒みてやれ」という発言がなされたとしても不思議ではない。預金保険機構がろくに調査もせずに、なにがなんでもカネをだそうと動いた理由もすべて説明がつく。 ・野中氏が幹事長を辞任した直後、二〇〇〇年十二月上旬、金融庁は破綻した全国の朝銀への管財人派遣を決めた。 ・二〇〇一年八月、管財人は旧大阪朝銀幹部八人にたいして二十億円の賠償請求訴訟を起こした。 ・これとはべつに、管財人は翌九月に神戸地検と兵庫県警に朝銀幹部を刑事告発し、近畿朝銀本店などが家宅捜索を受け、十一月十四日には幹部数名が検査忌避で逮捕された。 ・十二月二日には、全国各地にある朝銀の上部団体、在日本朝鮮信用組合協会会長ら五人を背任容疑で逮捕した。 ・一時破綻のときにこれをやっていたら、事態はまったくちがう方向に進んでいたはずだし、三千百億円の浪費は避けられていたかもしれないのである。 ●日本が暴力に屈した日 ・なぜ外国人のみの信用組合の設立を許可したのかには、それなりの事情があったのだと思われるが、朝銀の最大の問題は、かれらが公然とみずからは「治外法権」のもとにあるといってきたことだけではなく、事実、勝手なことをやってきたにもかかわらず、監督官庁である地方自治体は能力の限界もあって、でたらめな経営を見て見ぬふりをしてきたことにある。 ・朝銀の金融犯罪はわが国の救いようのない「弱点」の反映にほかならない。 ・朝銀をめぐって最初のトラブルが起きたのは一九六七（昭和四十二）年のことである。 ・東京在住の総聯商工人で、のちに暴力団員に殺された具次龍氏の脱税容疑で、国税当局は氏の取引先である朝銀の前身、同和信用組合に資料の提出をもとめた。同和信組はこれを拒否した。国税局は強制捜査をおこなうことにした。 ・ところが同和信組はシャッターをおろし捜査を実力で阻止した。国税局は機動隊をともなって、バーナーでシャッターを焼き切り、強制捜査を実施した。 ・これを契機に総聯は、全国の総聯系在日朝鮮人多住地域の税務署に「抗議行動」をかけた。各地の税務署で業務妨害が発生した。このとき日本政府は、国家公務員たる税務署員にたいする公務執行妨害でこれを取り締まろうとしなかった。 ・この具次龍氏の事件以来、総聯は気に入らないことが起きると行政官庁やマスメディアなどに「抗議」という名の「暴力」を公然とふるうようになった。 ・私は一九六七年の「抗議行動」を、第二次世界大戦後、日本が総聯の暴力に屈した恥ずべき日と記録している。ここに紹介したような事例は、いまにいたるまで、あちこちでみられる。 ・国税局ばかりではない。大韓航空機を爆破した金賢姫が、ソウルで初めて記者会見をしたとき、私はテレビ朝日の夕方の番組に解説者として出演した。 ・キャスターから「金賢姫は北の人間ですか」と問われたので「間違いないものと思う」と私は答えた。 ・その直後からフロアがざわつきはじめた。放送が終わってフロアにおりると責任者が飛んできて「先生の発言にたいして抗議の電話が殺到して、局の電話線がパンクしそうです」 ・まもなく私はフジテレビに出演して同様のことを話した。そのときは総聯の抗議団がテレビ局に来たという。 ・まだある。当時私は、日本テレビにもよく出演していた。あるとき日本テレビの記者が総聯へ取材をしにいくと「あんな男（つまり私のこと）を使っていると総聯に出入り禁止にする」といわれたという。 ・あのころは私が出演する番組には抗議の電話を集中してしかけていたようだ。 ・テレビ局は解説者のいっていることの可否ではなく、抗議に対応する煩わしさから、私のようなコメンテーターを敬遠することになる。かくして総聯は気に入らない人間の発言をテレビ界から追放することができる。 ・私は公安当局者をはじめいろいろな人から「身辺に気をつけてください」といわれた。これは日本人が総聯の直接間接の「暴力」をいかに怖がっているかの証拠である。 ・だが、総聯を支持する在日朝鮮人はいまや赤ん坊を含めて十万人いない。 ・いつまでも総聯を怖がっていれば、「暴力」をちらつかせることによって、十万人が一億二千万人の言論を支配できるということになる。これは日本にとってきわめて深刻な問題ではないか。 第３章　総聯は日本でどのような活動をしてきたのか ●在日朝鮮人は北朝鮮の「在外公民」である ・総聯、正式名称「在日本朝鮮人総聯合会」は、つぎのような敬意をへてできた組織である。 ・一九四五（昭和二十）年の敗戦のとき、日本には約二百十万人の朝鮮人が存在していた。 ・この年の十月十五日、日本にいた朝鮮人が大衆団体をつくることになり、共産主義者も反共主義者も一緒になって、「在日本朝鮮人連盟〔朝連〕」を結成した。 ・しかし、共産主義者とそれに反対する者たちがともに活動できるはずはなく、反共主義者が朝連から離脱して「在日本朝鮮人居留民団〔民団〕」をつくったのが、翌四六（昭和二十一）年十月三日のことである。 ・民団は、朝鮮半島南部に大韓民国が樹立されると、それを支持した。朝連は、北部に朝鮮民主主義人民共和国が成立すると、それを支持した。 ・朝連は政党ではないからさまざまな考えの人が参加していたが、朝連の指導部は日本共産党の党員で占められていた。 ・当時、共産党組織には「一国一党」の原則があって、在日朝鮮人だけで共産党をつくることはできず、共産主義者は日本共産党に入党していたのである。 ・その後、米ソの対立が激化すると、GHQ〔連合軍総司令部〕と日本国内の左翼勢力の対立が先鋭化し、朝連と民団相互の対立も激しさを増した。両者はおたがいに事務所を襲撃しあい、幹部の殺害があいついだ。 ・一九四九（昭和二十四）年九月九日、朝連は破壊活動防止法の前身である「団体等規制令」を適用され、解散・財産没収処分を受けた。 ・この朝連の後継団体として「在日朝鮮民主主義戦線〔民戦〕」が結成されたのが、一九五一（昭和二十六）年一月である。 ・半年後の六月、民戦のなかの朝鮮人共産党員のみで「祖国防衛委員会」をつくり、朝鮮戦争に反対する過激な活動をつづけた。 ・一九五三（昭和二十八）年、朝鮮戦争は休戦となった。 ・民戦結成直後から、一部の朝鮮人党員の間で、日本共産党の第一の目的は日本で革命を遂行することであるが、朝鮮人党員は北朝鮮の利益を優先する活動が必要だという主張がなされた。これを主張したのは「民族派」いわれるグループである。 ・かれらの考えを極論すれば、民戦は日本共産党の指導下からはなれ、朝鮮労働党の指導下で活動すべきだということである。これを裏で指導したのが金日成主席である。 ・一九五四（昭和二十九）年八月三十日、北朝鮮の外相は、在日朝鮮人は北朝鮮の「在外公民」である旨の声明をだし、事実上、日本共産党による民戦の指導を拒否した。 ・この声明を受けて、一九五五（昭和三十）年五月二十五日から二十六日にかけて、東京で総聯が結成された。朝鮮人党員が日本共産党から全員離脱したのは、二ヵ月後の七月二十五日のことである。 ●「地上の地獄」に送り出す ・総聯はこのように日本共産党の指導を離れ、朝鮮労働党のもとに発足した。その綱領は、 　一、在日同胞を北朝鮮の周囲に結集、南朝鮮同胞との団結をはかる。 　二、祖国の主権と領土を侵害している米帝国主義を追いだし、手先の傀儡を孤立させ、祖国の統一と独立に貢献する。 　三、在日同胞の居住、職業と財産および言論、出版、集会、結社、信仰など民主民族権益と自由を擁護する。 　四、民主的民族教育を擁護・発展させる。 ・新しく結成された総聯のなかで民族派が多数派になるのは、北朝鮮は「地上の楽園」であるといって在日朝鮮人のナショナリズムを煽り、帰国運動に火をつけたことが大きい。 ・当時、幹部のひとりは言う。 　「在日朝鮮人の北朝鮮への帰国を提起したのは金日成主席です。金日成主席が意図していたのは、在日朝鮮人を帰国させて労働力不足を補うと同時に、帰国者を通じて六十万の在日に政治的影響力を与えることにあったのです」 ・在日朝鮮人は、金日成主席と韓徳銖氏の合作事業によって、祖国は「地上の楽園」であると偽られ、もっとも自由な日本から、日本では絶対にみることのできない「政治犯強制収容所」で公然と殺人が行われているような「地上の地獄」へと送りこまれた。 ●朝鮮労働党の組織網がつくられる ・金日成主席は帰国者を人質にとって、在日朝鮮人からカネやモノを徹底的に搾りとった。 ・総聯のなかには非公然組織として朝鮮労働党の別名「学習組」というのがある。一九九三（平成五）年一二月から「学習組」に命令を下しているのが、朝鮮労働党統一戦線部長の金容淳書記である。そして、日本から献金を集めることを裏で指導しているのが彼であり、実行しているのが「学習組」である。 第４章　なにが拉致問題解決を阻んでいるのか ●「和」を尊ぶ国民性の功罪 ・ ＜途中＞