【最新更新日　：　2016年06月01日水曜日 】

２０１６年の読書履歴（№16-41）

★ 評価は、私の独断と偏見でつけたもので、読んだ時点で「ん、これは良かった！」と思った本です。
　　本そのものの良し悪しとはまったく関係ありません。☆はイチ推し、◎は、おすすめの本です。

№	了月	書籍名		著者	出版社	評価	抜き書き
41	16/05		ＮＨＫが日本をダメにした	武田邦彦	詩想社新書	◎	第１章　佐村河内事件でわかった公共放送失格の実態第２章　ＳＴＡＰ細胞事件に見る低レベルな報道姿勢あんな間違った批判をしたら、日本の科学研究は発展しない ◉そもそも基礎研究では「正しさ」など問われていない・ＳＴＡＰ事件は、　(1) 科学の進歩の体験をしていない素人の人たち、(2) 大騒ぎをしたいマスコミ、(3) それに乗って有名になりたく、(4) 研究をお金や名誉でやっている人、それに、(5) よく勉強しなかったので先生にコピペやデータの間違いを叱られた子供や青年、が「火のないところに煙を立てて、日本の科学に打撃を与えた」という事件だった。第３章　国民軽視で政府側に立った福島原発事故報道第４章　利権と結びついた偏向報道の裏側ＮＨＫがあるから日本でばからしい制度ができる ◉家電リサイクル法も、ＮＨＫと業界が作った無意味な制度・学問的には、分散したものを集めて再生するというのは、貴金属や金属製品などを別にすると原理的に無理で、特にペットボトルやトレーのようにかさばるものを回収する時のエネルギーが大きいので、焼却するのが最も「資源の有効利用になる」のはよく知られたことである。・自治体が使っている「リサイクル率」というのが実は「リサイクルするつもりで分別回収した率」で、「現実にリサイクルした率」ではないことぐらいは報道するのが適切だ。・ペットボトルやプラスチック製品の場合、公的な「リサイクル率」は６０％程度とされていたが、「現実にリサイクルした率」は２％以下だった。・これをなぜＮＨＫが報道しなければならないかというと、リサイクル制度が始まる前、ＮＨＫは盛んに「リサイクルすることによって資源が節約でき、ごみの捨て場所が助かる」と報道して法律が成立する手助けをし、さらにリサイクルに税金を年に４５００億円もかけるようになったのだから、報道の責任がある。・それから１０年が経ち、今でもリサイクル率は低く、税金は払われ、さらにリサイクルしていないのに廃棄物貯蔵所は満杯になっていない。何が間違っていたのか。報道して国民に知らせることがＮＨＫの役割であることは明白だ。・役所は法律を作り、天下り団体に多くの人が再就職し、国民は分別をして資源を無駄に使っているのだから、このような事実を報道し、日本国がよくなる方向に貢献することが公共放送の務めだろう。 ◉日本人の寿命は医療が進歩したから延びたのではない・メタボのこの奇妙な制度は、ＮＨＫが「メタボ、メタボ」と騒いでくれることに厚労省は期待し、現実にも医療業界、製薬業界、ＮＨＫの共同作業になった。「政府が右と言えば右、左と言えば左」というＮＨＫがいなければできなかっただろう。・もし日本に「政府の政策を冷静に批判的に見る」という報道機関があれば、まずは「日本は戦後、寿命が延びたし、世界一の長寿国だけれど、本当に肥満しているの？」ということを検討した報道をするだろうからだ。厚労省がメタボ政策を推進していった裏側 ◉メタボ登場に大きな役割を果たした医学研究・間違った報道で多くの人が誤解しているが、コレステロールは「コレステロールの多い食事――たとえば卵――を食べることで体内に入り、一度、多くは行ったら排泄もできない」と思われているが、まったくちがう。・まず、普通の食事をしていると、コレステロールは不足気味で、約７０％が体内（肝臓）で作られる。もちろん、体が作るのだから、コレステロールは人間が生きていくうえでとても大切なものだ。そして、体内にコレステロールが多すぎると排泄される。・コレステロールの場合、「体内のコレステロールの量を調整する機能が故障した」という状態を「病気」と言い、それによって「異常に高いコレステロール」という状態が起こり、それが動脈硬化などの原因になって血管系の病気になるというのが、ずっと人間が「病気」という名前で使ってきたものだ。 ◉メタボブームは製薬会社と医療の癒着、医学界の争いから起きた・最近、肥満に関係する薬剤の販売量が急増している。そのうち、一部は「病気」に使われ、一部は「基準値の引き下げ」によって予防的に使用されている。薬品会社は基準値の引き下げと薬剤の販売量との関係を正確に把握している。・つまり、メタボで大きく始まった「健康政策」は、国民の健康増進より、医学界同士の争い、製薬業界と医療の癒着、さらには厚労省に関係する医師の間のボス争いなどが大きな要因となり、国民は何が何だかわからないうちに右往左往するという状態なのである。なぜＮＨＫは利権側にまわったか ◉結論だけで、その根拠を伝えないメディアの弊害・たとえばメタボでは、「先進国で日本がもっとも痩せていて長寿なのに、なぜこれ以上、痩せなければならないのか？」ということなど、政府や専門家も説明しないし、ＮＨＫも報道しない。 ◉日本政府、日本社会の恥ずべき二面性・原発の安全性に関するフランスと日本の違い　フランスは原発の是非をめぐる投票前に賛成派は「原発は安全」と言い、その人たちがマジョリティになるので、国内のどこに立てても構わないのは理の当然だ。・これにたいして日本でも原発推進派は「原発は安全だ」と言って原発を始めたが、いざ建設することになると東京からはるか３００キロも離れた新潟と福島に建設し、延々と送電線を張った。　関西電力でも琵琶湖や淀川河畔など原発立地にふさわしいところがあるのに、活断層の多い若狭湾に１４基も建設した。・ＮＨＫの原発担当者に、「原発は安全ですか」と聞いたら、「安全です」と答え、「それではなぜ、東京の近くに立てないのですか」と聞くと「危険だから」と答える。この二面性は日本政府の二面性であり、日本社会の二面性でもある。・「日本人はコウモリだ」と聞いたことがある。まともな感じはするがいざとなると「強いほうにつく」という特徴があるというのだ。・メタボといい、原発やリサイクルといい、ＮＨＫの報道はまさに敵と味方の形勢を見て、キョロキョロするみじめな報道機関に見える。第６章　日本国に大損害をもたらした一連の報道報道とまったく違うツバルの事実 ◉すべてを知って計画的に行われたツバルの水没報道・２００９年の国連による温暖化データのねつ造事件に端を発して、ツバルもその事実が明らかになり、「ツバルのウソ」は消滅した。なぜＮＨＫはツバルの誤報を流したのか ◉学問的に見ても地球は温暖化していない・純粋に学問的な「温暖化とその危機」については、ほぼ否定されていると考えられる。　その一つが国連の機関であるＩＰＣＣの「データの捏造」だった。・純粋な科学の課題として、ＮＨＫは「これまでの学問的結果」や「現代が第二氷河時代である」ということを、最近１０年以上はまったく報道しなかった。これは明らかに「学問としての中立性」を失っている。・ＩＰＣＣは政府が選んだ委員でできていて自由参加できず、しかも学問の討論なのにほとんどが秘密会で、報告書の作成も秘密裏に行われる。つまり、ＩＰＣＣは学者の集まりではなく、政治家の集まりであることは明白だ。 ◉ＮＨＫが本当に地球温暖化について問うべきだったこと・宇宙が誕生し、しばらくして太陽系が出来たときには金星、地球、火星のいずれの大気もその９５％がCO²だった。・そして生物が誕生してから３７億年もの間、生物がCO²を食べ続けた結果、現在では大気中のCO²はわずか0.04%になってしまった。・私たちの体、お米……すべてはもともと大気中のCO²が原料で出来ているのだから、もう少したつと地球上の生物はCO²がないことによって死に絶える時期が来る。・「地球環境を一定に保つ」という点ではここまで減ってきたCO²を今後どうするか問うのが最も重要な課題だ。・もし0.04%に減少したCO²とそれによって生じている現在の氷河時代をそのままにするのか、もしくはCO²を徐々に増加させていって、かつてのように生物が繁栄し、温暖な地球にするかを議論しなければならない。・ＮＨＫが地球環境問題を取り扱うとすると、公共放送という意味から、また受信料を取っているので過度に商業的にならなくても営業ができるという見地から言っても、純科学的立場からの放送、国際的な政治問題としての温暖化、そして長期的な地球の環境として私たちが文明と環境をどのように調和するのかということを取り上げるのが適当だろう。・ＮＨＫは終始、日本政府とアメリカの一部の勢力――温暖化を推進し、途中で離脱したグループとしては、国際金融機関、世界規模の放送局、アメリカ農業団体、そして原子力関連の人――に協力して一方的な報道を続け、日本はどのぐらいの直接的間接的な被害を受けたのかも隠されている。・恐らく排出権の買い取りだけで１０兆円ぐらいは使ったとされているし、国民は税金をかなり余計に取られて、その税金は地球温暖化防止という間違った錦の御旗を掲げる特定の団体に吸収された。・まず第一に、ＮＨＫはここで示したツバル報道のような「やらせ番組」について調査をして、その結果を報告し、これまでの番組編成の問題点を明らかにして、再出発する必要があり、それをしなければ化学的に全く間違っているとわかった時、ＮＨＫは国民に与えた影響があまりにも大きいので、その組織を継続することもできないだろう。第７章　誰も言わない日本をダメにしているＮＨＫの問題点国民の啓啓蒙を口実にした恣意的放送 ◉国民にCO²削減を訴えながら、自分たちは排出量を増加させているＮＨＫ・ＮＨＫはここ数年、かなりの放送時間を割いて、「温暖化していること、温暖化が恐ろしいこと」を繰り返し報道し、「国民は我慢してＣＯ²を減らすべきだ」と言い続けてきた。・ところが、そう言いながら、ＮＨＫは自分自身が８０％ものＣＯ²を増やしていた。 ◉情報開示がまったく不十分な組織・ＮＨＫの状態を、ずばりと表現すると、　「自分はやらないことを、自分の顧客（強制的に受信料を取っている視聴者）に啓蒙する」　ということだ。このような行為は「啓蒙」とは言わない。「啓蒙」とは自らの信念に従って、社会に対して信念を発進するものだから、もともと自分自身がやっていないことを他人に啓蒙するということ自体があり得ないことだ。紅白歌合戦とＮＨＫの言論統制 ◉日本は「空気統制」によって報道が制約される・ある中国人の学者が、アメリカで日本のことを表して「日本より中国のほうが言論が自由です」と言ったことを聞いたことがある。・日本の報道規制は中国より現実的にも厳しいと考えられる。・第一に、ＮＨＫと朝日新聞が空気を作ると、その空気に逆らう報道ができなくなるという「空気統制」である。・日本人は「和をもって貴しとなす」というのを文化の中心に据えていると言われている。・日本人が「事実」より「和」を大切にし、和が崩れると思われるときには事実を曲げても和のほうを取る。・近年におけるＮＨＫ報道で「空気統制」が行われたものの一つとして、「ゴミが街にあふれる。リサイクル、ゴミゼロ運動」というのがあった。この運動はバブル崩壊とそれに続く大きな経済破綻の中で、「誰か一人が言いだし」、それに「無批判に大勢の人がついていった」という典型的な例だった。・まず、このまま大量消費大量生産すると近いうちにゴミ箱（廃棄物貯蔵施設）がいっぱいになると専門家が揃って言いだし、ＮＨＫもそれに追従して「ごみ問題」が大きく社会でクローズアップされた。・私は、自分で「ゴミを燃やして格納したら、現在の日本の廃棄物処理施設が満杯になるのはいつごろか」を計算してみたら、１５０年先という答えが出てきた。・えっ!?と思った。そのころ毎日のようにＮＨＫが「ゴミがあふれる」と放送していたし、専門家が「８年であふれる」と解説をしていたからだ。・当時、ＮＨＫがなぜ、８年か１５０年かを放送しなかったのだろうか。・それは日本では “社会にいったん空気ができるとそれに反したり、水を差す報道をするとバッシングを受ける” からだ。・当時バブルが崩壊して、みんなが縮小しようと思っているのだから、そんな時に「ごみ箱はいくらでもある」などと報道したら、袋叩きにあうという感覚である。 ◉取材しないで報道するという姿勢・東京近郊で実験特区のようなところができて、多くの税金が投入されてＮＨＫがゴミゼロ街を報道した。特に７時のニュース番組で、大々的に報道されたので、一度ＮＨＫに電話をして、本当にゴミゼロにしようとしているのか、それとも不当に税金を取ろうとしているのか取材されたかと聞いた。その時、電話に出たＮＨＫの人は「これからはしっかり取材をします」と返事をした。・その後、ＮＨＫの朝のニュースで沼津の大手会社の工場で「ゴミゼロを達成した」という報道があった。・今度は自分が取材してみようと思って、その会社の従業員の方にお聞きした。そうしたら、　「従来ゴミとして出していた廃棄物はリサイクル品としてリサイクル業者に出している。また食堂の生ゴミは会社から持たされて家に持って帰る。建前は家のたい肥に使うことになっているけれど、結局家からゴミとして出している」ということだった。・ゴミゼロではなく、明らかに「工場から直接ゴミとして出していない」というだけだった。・ビール会社が工場からトウモロコシの皮やひげなどが廃棄物として出るので、ゴミが多いと非難されることから、トウモロコシの皮をむき、ひげを取り洗ってビールに使えるようになるまでを「子会社」にしただけだった。・つまりこのころの社会の空気は、ゴミが少ないほうがよいということで、よいこ製造装置のようなＮＨＫがそれに飛びついて空気を作っていた時代だった。・実は工場の人に聞いただけで裏は取っていなかった。・ゴミゼロでは私とＮＨＫは３階のやり取りになるけれど、２回は怪しげで、沼津はやらせ番組に近い。・私がＮＨＫに言ったのは「ＮＨＫの朝の７時のニュースは、バラエティではないから、事実を取材して伝えなければならないはずだ」ということだが、「空気統制」があるから、ＮＨＫは取材しないで報道するということを繰り返していたと私は思う。・このようなことは私が指摘するのではなく、ＮＨＫが自ら調べて公表し、謝罪したほうがＮＨＫの正常化と今後の発展に役立つと思うし、空気統制を強めているＮＨＫに対するこのような事実が積み重なることがＮＨＫ自体を危機に陥れると思われる。 ◉クレームに対する組織防衛の強固な体制・ＮＨＫはツバルのことを報道するのに、その分野の専門家がいて、その人が根拠を示してツバルが沈んでいないと言っているのに、日本社会に「ツバルが沈んでいる」という空気ができていたら、それを補強し、また政府の政策の方向ならますます都合がよいという態度を変えなかった。・つまりＮＨＫがいかに事実と違う報道をしても、それが国民の空気に沿っていて、政府の方針に従っている限り、何でもできるという確信があるからにほかならない。 ◉紅白歌合戦などの巨大番組がＮＨＫへの芸能人たちの批判を封じている・ＮＨＫのような「政府だけが怖い」という放送局を作ると、放送のゆがみに対して是正する方法がないことがわかる。・民放の場合には、良くも悪くも視聴率というものがあるから、あまりに変な放送を続けていると、視聴率が下がるという自浄作用を持っているが、ＮＨＫにはそれがない。・もともとは民放はスポンサーがいるから放送が偏向するが、ＮＨＫは受信料で放送するから国民側に立った放送ができるとされていたが、事実は全く違う。 ◉「権威」に無批判に追従するＮＨＫ・政府や自治体、学会など権威のあるところに逆らって報道をすることが現実的にできないということで、やや空気統制と似ているが、「権威統制」とでも言えるものがある。・もともと原子力事故では風向きが大切だから、ある国で原発事故が起こったら、直ちにその国の気象庁が隣接国に対して原発付近の風向きを報告することになっている。・事実、福島事故が起こった直後から気象庁は原子力の国際機関に風向きを報告したが、それを日本国民にはしなかった。・それに加えて、日本気象学会は理事長名で「気象学会に所属する学者は福島の風向きを発表してはいけない」というお達しを出す。・政府から補助金などをもらっている理事長としては政府の要請に従わざるを得なかったのだろう。・それに追従してＮＨＫも天気予報の時に福島の風向きを放送しなくなった。・政府に都合の悪いことを報道すると、直ちに政府から放送局に直接、クレームがつく。・このような場合、受信料を取って運営しているＮＨＫは最も強い立場にあるのだから、断固としてクレームをはねつけ、クレームがあったこと、具体的にどの役所からどのようなクレームがあったということを報道することが「真なる報道の力」であり、「報道の価値」でもある。