【最新更新日　：　2016年12月07日水曜日 】

２０１６年の読書履歴（№16-92）

★ 評価は、私の独断と偏見でつけたもので、読んだ時点で「ん、これは良かった！」と思った本です。
　　本そのものの良し悪しとはまったく関係ありません。☆はイチ推し、◎は、おすすめの本です。

№	了月	書籍名		著者	出版社	評価	抜き書き
92	16/11		神道感謝のこころ	葉室頼昭	春秋社	◎	マインドコントロールから目覚めるために・人間の眼は、ごく限られた波長の光しか感じませんが、宇宙には無数の波長の光があります。すなわち、宇宙に実在するもののなかで、ごくわずかしか見ることも感じることもできないのが人間なのです。・「眼で見えないから信じない」という態度では、世の中の本当のこと、真実の生活から遠ざかりこそすれ、近づくということはなく、それどころか逆に、現代で最も非科学的な態度であると私は確信しています。・世の中の本当のことや、自然界の不変の法則に思いを及ぼさず、人間の不完全な知識で、物ごとの一面だけを見て判断することの危うさ。これが人間社会にとってどれほどのマイナスになっているか。こうした、科学のマインドコントロールに気づこうともしないものが今日の風潮なのです。いのちのないものは滅びる・伝統を受け継いで、それを子供に伝えようとするのが命です。これが今の日本にはありません。伝統や誇りというものを受け継いでいないのです。ですから命がありません。命がないものは滅びるというのが大自然の鉄則です。だから、日本人は滅びるといっているのです。誇りを忘れた日本人・キリスト教では自分が悪いことをしたら懺悔して、自分の罪が許されることを願うでしょう。あくまで自分というものがあって、自分の罪を許していただくということです。・しかし、神道ではちがいます。自分が汚れていると、その汚れを尊い神さまに移すかもしれない、それでは申しわけないからと、神さまに汚れがうつらないように自分を祓(はら)うのです。他人にうつしたら申しわけない、他に迷惑がかかる、というふうに常に他のことを考えるのです。・お祭りで行うお祓い、神社にお参りするときの手水、これもみな神さまのために清めているのです。人間同士でも、自然に対しても、相手のことを思いやる姿勢が日本人の本来の姿なのです。神さまとも共に生きようという姿勢が、神社ではお祭りになるのです。これが古来よりの日本人の生き方です。・いま、神道に興味を抱く外国の方が増えています。現代は、これまでの唯物論的な考えが行き詰まり、地球が荒廃してどうにもならなくなった時代です。何とかこれを回復させなければならないと気づいたときに、自分たちの社会にはない、まったく別の考え方を持っている神道に出会ったのです。そして、この荒廃した地球と疲れ切った世界を救えるのは、日本人の共生の生き方しかないというのです。・日本人が優れているのは、ハイテク技術とかいうことではありません。人間としての生き方が、本当に素晴らしいということなのです。見えない「心」を知る・昔の人は、「自分たちが今あるのは、神さまのおかげ」、何かをするにしても「これはご先祖さまのおかげ」、何かあったら「他人(ひと)さまのおかげ」と、ものごとの後ろに見えない心があることを知っていて、感謝しながら日々を過ごしてきました。　この見えない「心」を知ることこそが、今の日本の社会に求められているのです。内なる神さまの美・もともと日本人は、心を大切にしてきました。日本人の心の原点にあるのは、神さまに悦んでいただけるように感謝を捧げる祭りの姿です。・人びとは長い間、豊かな自然の声に耳を傾けて暮らしてきました。たとえば、道端に咲く小さな花が、自分の美しさを見せようとしてではなく、与えられた命を精いっぱい生きようとして咲いている姿に、神さまの真実の美の素晴らしさを見出してきたのです。・そういう神さまの「美」はいたるところに溢れていますから、どんな生き物にも内には神さまが宿っていて、みな神さまのお心によって生かされているということに人々は気がついていたのです。そして他人や自然に対しても敬いの心や感謝の心を忘れず、心豊かに自然と共生してきたのです。「お母さん」がこの世を救う・最近は「お母さん」がいなくなっているように見受けられます。・ここで私が申し上げようとする「お母さん」は、子どもを産み育てる女性すべてを指して言っているのではありません。子供のために自分を捨て、無我になって子供を育てることのできる人のことなのです。・本当のお母さんであれば、いとも簡単に子供のために全てを捧げることができます。次の世代を担うことができる、素晴らしい立派な子孫を育てることができるのです。・母親が無我になって子供を育てると、子どもは立派に育ちます。水は摩訶不思議・世の中のすべての物質のもと、いわゆる分子や原子は、すべて波動でできています。光も波動なら水の分子も波動です。そして、その分子が、ものすごい速さで運動している。・私たちの体の六十パーセントから七十パーセントは水で構成されています。・生物は、海の中で誕生し、三十億年間は水中で生活し、やがて今から五億年ぐらい前、陸に上がってきたといわれています。そのとき、海水を体内に蓄えて地上に上がってきたため、われわれの体液というのは、海水と非常によく似た成分で構成されています。・これがいったいどういうことにつながるのかといいますと、月の引力によって海が満潮になったとき、人間の体も満潮になっているということです。体が満潮になるということは、体内にエネルギーが満ちるということです。・満潮時に子どもが生まれるとよくいいますが、これは迷信でも何でもありません。赤ちゃんも体液と同じ羊水の中に入っており、そこが満潮になるのです。・その反対の干潮時には、体のエネルギーが少なくなります。干潮時にお年寄りがよく亡くなるといわれるのは、そのためです。・生物は月の引力によって多大な影響を受けているのです。・これがいちばんはっきり分かるのが生殖行為です。満月が排卵日となり、このときだけ交尾する動物が魚類でも鳥類でも爬虫類でもたくさんいます。・ただし人間は、「我」が発達したため、めちゃくちゃになりました。・病人と健康な人の体液を調べてみると、病人の体液が非常に汚れているのが分かります。つまり、体液が汚れてくると病気になるといえるわけです。ですから、健康になるには、この体液をきれいにすることが大切になります。これが健康の秘訣なのです。・ガンになった人、なる人の体液を調べてみますと、水の分子がたいへんな勢いで体の細胞にぶつかっているそうです。そのぶつかったところが、がん細胞に変化してくるのです。加えて、病人の体液の分子配列が相当乱れているということが分かってきています。・人体を構成する細胞には細胞膜という膜があり、その膜の空いている穴から水が出入りします。出入りする水は栄養を持ち込み、同時に細胞内の老廃物を運び出すのですが、その作用を十分に行うためには、できるかぎり分子配列の整ったきれいな水が望ましいのです。・最近は、この水分子の配列が人間の心理状態によって変化することも分かってきました。人間の心も水の分子構造も同じ波動ですから、心の波動によってきれいな水にもなり、汚い水にもなるのです。・いらいらして腹を立てたり悩んだりすることでゆがんだ心の波動が、体液に少なからぬ悪影響を与えているのです。だからこそ毎日、神さまに導かれた感謝の心を養うことが最高の健康法であると私は思うのです。・人間の体は、体液がきれいになれば自ら健康になるのですから、素直な心で水を飲むこと、これが大切なのではないでしょうか。インフルエンザはなぜ流行るか・インフルエンザは、インフルエンザ・ウィルスによって細胞の核の仲にる遺伝子が破壊されるもので、思い風邪に似た症状がでてくる。・残念ながら、薬を飲んでもウィルスは死にません。なぜならウィルスは生物ではないからです。また、物でもありません。その中間の摩訶不思議な存在です。生物ではないので、薬で殺すことはできません。・インフルエンザ・ウィルスは、体温が三十七度ぐらいのときにもっとも活動しますが、三十八度から三十九度になると、動かなくなります。・そのため、インフルエンザ・ウィルスが体の中に入ると、体はまず熱を出します。三十八度から四十度の熱を出してウィルスの働きをとめ、汗や尿として外に出そうとするのです。・ところが最近の人は、熱が出たとなると解熱剤を飲んでしまいます。せっかく体がウィルスの力を弱めようと頑張っていても、熱を下げてしまう。そのために、ウィルスがまた活動を始めるのです。・治りにくくしているのは人間です。・すぐお医者さんかかかり、薬を飲んでも熱が下がらなければ「あいつはやぶ医者だ」などといいますが、やぶどころではありません。お医者さんに行って、薬を飲んで熱が下がらなければ、そのお医者さんは名医です。・すぐ治すのが名医だと思われていますが、本当は、すぐには治さないのが名医です。ですが、お医者さんも、自分がやぶ医者だといわれたくないがために、悪いことが分かっていても薬を出します。そして、熱が下がって病気が流行ることになるのです。まさしく悪循環なのです。抗菌グッズを考える・近ごろは流行とでもいえるほど、抗菌グッズが巷にあふれています。・身の回りがいっさいがっさいを無菌状態にしようとしているのは、度をこした潔癖症というより一種の病気のように見受けられます。・抗菌グッズに使われる抗菌剤には二種類あり、一つはどんな菌でも殺してしまう消毒剤、もう一つはわれわれが薬で飲んでいるような抗生物質です。・人間の皮膚にはもともと、ばい菌などの異物から体を守る働きがあります。皮脂を出してその油で表面を滑らかにしたり、肌を弱酸性に保って、ばい菌を防いでいます。　また、肌には良い菌が住んでいて、それらがばい菌から人間を守ってくれる共存関係にあるのです。・そうした防御作用を持っているので、あまり石鹸で洗いすぎると手が荒れたり、抗菌剤で良い菌まで殺してしまうと、逆にばい菌が体の中に入りやすくなってしまうのです。・ばい菌が体内に入ると、それを白血球などが攻撃して殺そうとします。そのときに多量の活性酸素が出て、皮膚がかぶれたり、他の病気が現れたりすることがあるのです。・もう一つの問題は、抗生物質などの薬によって菌を殺していくと、やがて菌が進化して薬では殺せない菌が生まれてしまうことです。これを耐性菌といい、いざ病気になったとき、お医者さんでもらった薬が効かない、ということになりかねないのです。・菌を殺すことばかり行なうと菌に対する抵抗力が弱くなってしまうのです。・エイズは、ウィルスによって人の免疫力がなくなってしまう病気ですが、今の人が抗菌グッズに頼ってどんどん無菌化していったら、菌に対する免疫がどんどんなくなり、最後にはエイズと同じ結果になってしまうかもしれません。・このようないきすぎた抗菌の問題は、現代日本人の利己主義の現われに思えてなりません。根底にある「自分さえよければ、多くの人に迷惑をかけてもかまわない」という考え方です。しかし、世の中はすべて循環とバランスから成り立っているのですから、その場しのぎの利己主義は、やがて自分自身を破滅へ導きます。・本当の抗菌というのは、薬や消毒に頼るのではなくて、菌に負けない抵抗力のある体を作ることです。そしてこれが人間の体の進化、本当の健康につながっていくのです。「働く」ことは「傍た楽」こと・体を「鍛える」のと「使う」のとでは、似ているようでその結果が全く違ってきます。・マラソンやジョギングをしたり、健康器具などを使って身体を鍛えている人、アスレチックセンターやジムなどへ通って、テニスをしたり筋肉トレーニングをしている人、これらは「鍛える」ことによって健康を維持していこうという考えからきたものですが、実はそれで自らの寿命を縮めていることが往々にしてあるのです。・健康のためには「鍛える」のではなく「使う」ことが大切なのです。・ここでいう「使う」とは、自分で何かをするのではなく、「させていただく」ということを指します。・自分で使おうとすると、「鍛える」ということになり、心労につながります。そうすると寿命を縮めてしまうのです。ですから、ものごとは、自分が「する」のではなく「させていただく」「使わさせていただく」ことが大切です。こうなると最高の生き方ができるのです。・これはそのまま日々の「仕事」にも当てはまります。働けば働くほど健康になり、自分も周りもますます充実し、天寿を全うすることが幸せなのだと思います。「働く」つまり「傍(は)た楽(らく)」ということです。・それを「労働」としてとらえると、逆に病気になったりして寿命が縮まり、決して充実した人生とはなりません。・なぜなら、「労働」というのは「オレはこれだけ働いてやっているんだ」「だからこれだけの報酬をよこせ」といった、感謝の心とはかけ離れた取り引きの関係であるからです。・それに対して「働く」というのは、周囲を楽にさせ、周囲を幸せにするために生きることが本当の目的なのです。　日本人はそれを知っていました。だからこそ、働かせていただくという心情、感謝が息づいていたのです。・「労働」と思って働くと人間の命を縮めてしまいます。「労働」するからこそ疲れるのです。・「働く」というのは本来、神さまに楽しんでいただくこと。そして周囲の人を楽にさせるために働けば、疲れることはありません。・感謝の気持ちで働いたら皆から喜ばれ、感謝されます。そうするとさらに充実感に満たされて、もっともっと働くという素晴らしい相乗効果があるのです。そのように人間はできているのです。・今「労働」をしている人は、もし健康に長生きをしたければ発想を転換させ、「させていただく」感謝の心をもって「働く」ことが大切です。自分の体に感謝する・人間の身体の細胞一つ一つもみんな生きています。ですから、認めてあげることで、やはり非常に生き生きとしてくるのです。・この体は、生まれてからずっとこの何十年間一秒の休みもなく働いてくれています。この体に生かされているのに、ご主人さまが一向に褒めてくれないとなると、細胞も怒ります。もう力が出なくなってしまうのです。・ですから、一つ一つの細胞を、「素晴らしいね」と認めてあげて、感謝してあげる。これが健康の本当の基本です。・病気（例えば五十肩）は、体に感謝すると治ってきます。これは本当の話です。病気をつかんではなさない人は治らない・長年医者をしていると、その人の病気が治りやすいか治りにくいかはすぐにわかるようになります。それは、病気が重いか軽いかではなく、その人の心の持ちようによるからです。・「先生、前回よりもこれだけ良くなりました」と感謝して喜ぶ人は治りが早く、反対に、治ったことは口に出さず「まだこんなに残っている」と不平不満を訴える人はなかなか治りにくい。・病気を治そうと思ったら、まず病気を心から突き放すことが大事です。・神社では、神さまに「健康にしてください」とご祈禱においでになる方が多いようですが、しかしこんな方は神さまのお恵みを受けることができません。なぜなら、「健康にしてください」ということは、自分が病気だと思っている現れだからです。心で病気をつかんでいたら、いくら神さまにお祈りをしても、お恵みは得られません。・「神さま、健康にしていただいてありがとうございます」と感謝をするのが、本当のことなのです。心を放せば神様のお恵みがいただけます。・いつも心に病気をつかんでいる人は、病気になりやすく、すべてを良い方向に考え、感謝している人は病気になりにくいのです。不要な生き物などいない・この世の中には、良いとか悪いとかいう判断は本来はなく、全てこちらの都合で善にもなれば悪にもなるのです。体の仕組みと本当の国際化・体は無数の細胞からできていますが、これは、一個の卵細胞が分裂や増殖を繰り返してできたもので、もとは同じです。にもかかわらず、皮膚の働きをする細胞や、胃の働きをする細胞と、その働きには違いがあります。・その働きの違うそれぞれの細胞が、お互いに調和することによって、人間の体は生きられる仕組みになっているのです。・これは世界の働きにもあてはめられます。・国際化というと、一生懸命、外国について勉強し外国の真似をすることのように考えて、小学生の頃から英会話を習ったりする人がいますが、これは間違った解釈です。・人間が全部、胃の細胞だったり、皮膚の細胞だったらどうなりますか？　胃もあり、目もあり、鼻もあり、脳もあって、体を覆う皮膚もあるからこそ、人間は生きられるのです。・全ての人が英語を話せるようになったとしても、それは国際化とはいえません。人体と同様に、全ての国の人々がみな同じことを考え、同じ働きをしたら、人間は生き続けることができないでしょう。・いろいろな国や人種や考え方があり、それが全体としてバランスを取ってはじめて、人類は進化し、発展することができるのです。・日本人は古来から持ちつづけている共生の生き方や感謝の生活など、世界に誇れる多くの特質を保ちつつ、ほかの国々と平和で平等な関係を作ることが、真の国際化であり、世界の仕組みに適っているのです。・そして自然や人体の仕組みにしても、その他のことにしても、多くの要素が集まって十分にバランスを取っている状態が、もっとも理想なのです。アポトーシスの作用・人の体は常に新陳代謝を行ない、人体を作る無数の細胞は生まれ変わり続けています。そこで常に正常な細胞に生まれ変われば良いのですが、細胞の中にはガン細胞に変化してしまうものもあります。・それでもガンにならないのは、不必要なものは消すという、ありがたいシステム（アポトーシス）が働いてガン細胞を消し、体を守っているからです。無意識について――遺伝子に貯えられた情報・人間には意識と無意識とがあり、われわれの体の九十五パーセントほどは無意識で生かされています。心臓が動くのも、食べ物を消化吸収するのも、免疫細胞が体に入ってきたばい菌を殺すのも、意識しないうちに体が勝手にやってくれています。・この無意識は、細胞の中の遺伝子に貯えられた情報から出てきます。・遺伝子に蓄積された情報というのは、神さまのお恵みと、ご祖先の経験から得た知恵が貯えられたものですから、この二つによってわれわれは生かされているということです。・ですから、われわれは神さまやご祖先からの恩を受けなければ、一秒たりとも生きていけないわけです。・無意識が百パーセントで働けば、われわれは健康で幸せな生活ができるのですが、そのわずか数パーセントの表在意識という意識、つまり「我欲」が、無意識の働きを邪魔して、いろいろな悩みや苦しみが起きてくるということなのです。老いの素晴らしさ・老人は、若者や世の中の厄介者ではなく、死ぬまで後輩に伝統と真実の人生のあり方を伝えていく存在であるべきです。・「このように生きていけば、健康で長生きする」ということを後輩に伝え、また「このように死ぬのが真実の死である」と、大往生することで死に方を伝えることが大切なことなのです。真実の生活を送る・三十五億年もの間、生命が続いてきたわけは、細胞中の遺伝子を絶やすことなく伝えてきたことによります。・親の遺伝子を子に伝え、子が親の遺伝子を受け継ぐという方法以外に、命が伝わることは絶対にありえません。・これを人間の体で伝えているのが新陳代謝です。古い細胞がその遺伝子を新しい細胞に常に伝えることによって、われわれは生かされているのです。この新陳代謝が終わったとき、人間の生命も終わるのです。・生命というのは、個体の生命だけを指すのではありません。生き物はそれぞれ、その種の生命を伝えることによって、個々の生命が伝わるという仕組みになっているからです。・人間なら、個人の生命だけでなく、国としての生命、民族の生命、企業の生命、そしてそれぞれの家の生命を伝えることによって、個々の生命が伝わるという風にできているのです。・ですから、国や民族が持っている特有の伝統文化を伝えなくなると、その国は滅亡し、個人の生命もまた滅んでいくことになります。・しかし、戦争に負けてからの日本は、日本人として誇りを持つべき過去の歴史や伝統文化をすべて否定し、子供たちに伝えなくなってしまいました。これは大変なことです。・このために戦後生まれの人たちは、過去のことはすべて自分には関係ない古いことだと考え、日本の国に誇りを持たないようになってしまったのです。・日本の歴史や文化を知らないために、アメリカや西欧が正しく、また優れていると考え、日本人は外国人よりも劣っていると思い込んでいる人が多いのです。・しかしこれは、日本人の生活やものの考え方が外国人とは異なっているだけのことであって、その異なっていることの中に、他国の人たちには見られない素晴らしい宇宙観、自然観そして優れた情緒が息づいているのです。・日本人は、人間は自分で生きているのではなく、すべて神さまの恵みと祖先の恩によって生かされているという感謝の生活を送ってきたということです。これは、人間の生きる素晴らしい真実の道です。・この世の中にはいろいろな悩みや苦しみ、病気などがありますが、それらすべては、生かされているという感謝の気持ちを忘れ、自分で生きているという「我(が)」の心が原因で現れてきます。・いろいろな悩みが現れるのは、神さまからいただいた清浄で健康な素晴らしい姿を覆って包んでしまう罪（包み）や、私たちを生かしてくださる神さまの尊い気を枯らしてしまうような穢(けが)れ（気枯れ）が身についたためだということを、昔の日本人は直感で知っていました。・ですから、これらの罪穢れを祓い除けば、もとの健康で幸せな姿が現れるとして、古来より祓いということを行なってきたのです。これは、世界に誇るべきことであると私は思います。・今の医学では、病気は存在するものであり、それを撲滅するのが治療だと思われています。しかし私は、この日本人の「罪穢れを祓えばもとの健康が現れる」という考え方のほうが真実の医学ではないかと思うのです。・日本人は古来より素晴らしい真実の生活を続けてきた世界でも珍しい民族でありますから、これらをひとりでも多くの人が自覚し、日本人の誇りをもって、胸を張って生きてほしいと願っているのです。信じることと分かること・学校で神道のことを勉強し、多くの本を読んでたくさんの知識を持っている人がいたとします。「よし、これで神道は分かったぞ」といって、親に感謝もせず、気ままに生活し、ゴミを手当たり次第に捨てたりしていたのでは、すこしも分かっていないということです。・「分かる」ということは、実践するということです。・どんなに勉強したところで知識ばかりで「行い」がないのなら、何の足しにもなりません。「我」を捨てなければはじまらない・神さまを知るには自分で体験するほかない。・その第一は、神社でよく行われる祓いです。罪や穢れを祓うことです。・罪とは悪いことをした罪ではなく、神さまからいただいた素晴らしい人間の姿を、包み隠してしまうことを指します。穢れとは、汚いということではなく、人間を生かしてくださる神さまの気を枯らしてしまうもののことです。まずこれを祓うことです。・この罪穢れのなかでいちばん大きなものが「我」だと私は思っております。・神道的生活の基本は、「神さまの恵みと祖先の恩に感謝」ということです。・自分の力で生きているんだと思うと、そこに必ず「我」が出てきます。・この「我」をなくすためには、なにごとも神様のお恵み、祖先の恩によって生かされているということを実感することが大切なのです。また、こういう生活をしないことには、本当に神さまを知ることはできないのです。・祓いの力と自身の精進によって「我」がなくなったとき、実感としてすべてに感謝の気持ちを抱くことができます。・ただただありがたくて、生かされていること自体がありがたいと思うようになります。何々なんだからありがたいということではありません。理屈ではないのです。・子供の入試合格を神さまにお願いして希望の学校に入学できた、健康をお願いしたら病気が治った、お金が儲かった・・・・・・だからありがとうございますというのではないのです。　こういうときに「ありがたい」というのは、本当の感謝ではありません。・入学祈願として希望の学校に入れなかったとしてごらんなさい。「なんだ、お願いしたけどさっぱりだ、聞いてくれなかった」となって感謝しないでしょう。　これは、感謝ではなく取り引きです。・お願いしてご利益があったらありがとうと言うけれど、そうでなかったら感謝しないというのではないのです。・感謝というのは理屈のない感謝です。ありがたい、ただありがたいという気持ちが、本当の感謝なのです。無我のありがとう・理屈のない無我の感謝が出来たら、すぐにでも神さまに会えます。簡単なことです。ですから神道はシンプルであり、ややこしい教理経典がないのです。・「ありがとうございます」ということ、これだけでいいのです。けれどこの「ありがとうございます」がなかなか言えないようですね。「ありがとうございます」というと「何にたいして？」ということになり、さらに理屈がくっついてきます。　このような理屈の世界に神さまはいらっしゃいません。・「何に？」ではありません。ただ「ありがとうございます」で終わりなのです。これがいえたら神さまの世界が見えてくるのです。この世とあの世の風通し・感謝のお祀りもしないで、一方的に自分の願いごとだけ「よろしくお願いします」という、まさに困った時の神頼み、ご祖先頼みの態度を改めなければなりません。・普段は忙しい生活に追われていても、年に何度かはご加護いただいている神さまやご祖先に対して、真摯な気持ちでお祀りを行うことが大切です。そうすることで、その家は栄え、永遠に続いていくのです。お供えのこころ――してもらってうれしいことをする・神さまはお客さまです。来ていただくためには十分にもてなしの準備をしておかなくてはなりません。・来ていただくためには、まずお祓いをして穢れを祓います。これは、座敷をきれいに掃除して、玄関に水を打って待っているのと同じことです。・そして、いらっしゃったらおもてなしをします。それが祭りです。神主さんが神饌(しんせん)というお食事を差し上げて、神さまに召し上がっていただくのです。・まずこちらから神さまが悦んでくださることをすること、これが大切なのです。あとがき・日本人は昔から、全てのものと一緒に生きるという共生という考えを以て生活してきましたので、世界の人たちには見られないような素晴らしい自然観・人生観を持つようになりました。そして縄文時代より約二万年も祖先たちがそれを伝えてきました。・戦後それらを全て捨てて、アメリカなどの影響で物質第一主義の、なにごとも理屈で考える日本に変わってしまいました。　何とか日本人の原点に復って、素晴らしい日本人のこころに目覚めてもらいたい。