| ★ 評価は、私の独断と偏見でつけたもので、読んだ時点で「ん、これは良かった！」と思った本です。 本そのものの良し悪しとはまったく関係ありません。☆はイチ推し、◎は、おすすめの本です。 |
【最新更新日 ： 2018年08月13日 月曜日 】
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| № | 了月 | 書 籍 名 | 著 者 | 出 版 社 | 評価 | コメント＆抜き書きへのリンク | |
55 |
18/07 |
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KGB |
フリーマントル |
新潮選書 |
◎ |
２ KGBの歴史 帝政ロシア以来の伝統 "秘密警察" ・一九〇四年、ロシアは満州や朝鮮に勢力を拡大しようとする闘争的な試みで、日本に対し宣戦布告抜きの戦端を開いていた。 ・極東の一小国によって、大国ロシアは屈辱的な敗北に次ぐ敗北を喫した。 ３ 史上最大のスパイ・マシン 不恰好なウェディングケーキの外観 ・一九三四年から三八年までの四年間で、スターリンの保安機関が «大粛清» 中に虐殺した人間は一千万にのぼるといわれている。 海外にも張りめぐらされたKGB網 ・ソ連邦内に配置されたKGB要員、工作員、情報提供者は百五十万人に達し、海外では大使館、代表部、領事館、貿易公社、航空会社を通じて、二十五万人が情報活動に従事しているとみられている。 海外活動の中枢部 «第一管理本部» ・ソ連では、国内至るところにスパイ学校が設けられている。 ・スターリンは次のように述べた。 「言葉は行動と関係ない――そうでなければ、外交述は成立しないはずだ。言葉と行動はまったく別個のものである。美しい言葉は醜い行為を隠すための仮面にすぎない。誠実な外交というのは、乾いた水とか木製の鉄と同じように考えられないことである」 ・第一管理本部で最高機密とされている機関の一つは、いまのところ «執行活動局» と呼ばれている。 «V局» とも呼ばれてきた機関だ。 ・このV局で暗殺者が訓練されるのである。 ・相手に用いると数分で傷跡を残すことなく体内に吸収される毒物の使用法も教えこまれる。 ・またある種のガスは、特製の噴射銃から発射され、被害者と同時に狙撃者までも確実な死の危険に陥れるのである。 ・暗殺者はさらに、シガレット・ケースやペンに仕込まれた特殊バッテリー内臓銃の使用法も教えられる。 ・自動車を計画的に故障させる技術コースまであり、運転手や乗客が死ぬ偽装事故を演出しても、専門家からは不可抗力とみなされる。 ・これらのエージェントは、組織的な破壊工作や治安妨害活動の技術訓練も受けることになる。 ・ソ連が目標国から十分な利益を得られると考え、その国に内乱状態を起して介入したい場合、彼らは相手国の通信システムや輸送網を混乱に陥れる工作ができるわけだ。 ・ソビエト式保安組織の創始者といってよいウラジミール・イリイッチ・レーニンは言っている。「われわれ共産主義者は他の二国間の対立をうまく利用しなければならない」と。第一管理本部は、まさしくそのためにこそ存在するのである。 国内の外国人工作 «第二管理本部» ・KGBの国内支配体制は、第二管理本部と第五管理本部に分けられている。――第三、第四というのは存在しない。 ・第二管理本部には、それぞれ担当する国名がはっきりと冠せられ、ソビエト連邦内で外国人に罠をかけたり買収したりしながら、ソ連市民との接触、交流を管理する任務が与えられている。 ・一つの部は外国大公使館員の取り込み（徴募）工作を担当し、別の部は外国大公使館員による反ソ謀略活動の成功を阻止する。 ・また外国大公使館員と接触しようとするソ連人を監視下におく部もある。 ・第二管理本部には、あらゆる外国大公使館員の電話を盗聴し、監視下におく任務があり、独立した技術本部によって支援される。 ・技術本部はエレクトロニクスの科学実験から、毒薬や暗殺用凶器の開発にいたるまで対象とする。 ・またここには、脅迫などに使われるおびただしい身元調査記録を作成する部門もある。 ・当人を盗聴マイクや隠し撮りの設備がととのった特殊なアパートに誘いこむ工作もできる。 ・第二管理本部の第一局は、さまざまな部課に分れ、各国駐在のアメリカ大使館に対する浸透工作、電子監視を任務とする。 ・外国大使館が修理屋を呼べば、くるのは情報工作員と思ってよい。大使館周辺の道路清掃人も下水道で働く作業員も、ことごとくそうである。 ・アパートなり家屋なりは各室とも、いや、トイレからバルコニーまで盗聴装置が仕掛けられ、電話も盗聴されているという。 ・隣接の家屋かビルにはたいてい監視機器が設けられ、カメラである場合が多い。 ・プラハ市内の高級レストランには、電子盗聴装置付きのテーブルや個室があり、ボーイは情報機関に属している。 精神病患づくりの «第五管理本部» ・第五管理本部は、一九六九年特設された。 ・それは反体制運動の公然化という緊急事態だった。そこで異議申立を粉砕し、集団行動に規制を加えようとしたのである。 ・KGBは、科学と薬物の力に訴えたのであった。 ・セルブスキー法精神医学研究所は、公的には保健省の所管であるが、同省はKGBが支配している。 ・一九七五年の時点で七千人の反体制運動家が “化学的ロボトミー” の処置を受けたといわれる。 ・たとえば、アミナジンと称せられる薬物が政治的異端者にしばしば投与されると、ショックと抑鬱症状を招来する。 ・サルファジンの投与は高熱を発生させ、体じゅうの節々に鋭い痛みを感じさせる。 ・ ・KGBは反体制運動に浸透し、粛清するためなら手段を選ばない。 ・アンドロポフ議長は述べた。 「誤った指導を受けた者たちを、われわれは何とか助けようとしている。彼らを改心させ、妄想を追い払ってやろうとしているにすぎないのだ」 ・KGB議長の解釈によれば、体制に反対する主な原因の一つは、精神的な不安定であり、適切な入院加療を必要とする。 ・アンドロポフ曰く 「第一、反体制という用語は、公衆を迷わせるために用いられた抜け目ない宣伝上の発明である。西側の宣伝屋はそんな用語を使うことで、ソ連のシステムは自由な思想を許さないとか、路線の逸脱者を迫害するとかいったような状況を演出しようと狙っているのだ。そのような作り話は現実とはまったく関係がない」 少数民族強制移住の張本人 «第六局» ・ソビエト社会主義共和国連邦内に組みこまれた多くの共和国でも、政治上の反体制活動に加えて、ロシア化を拒否しようとする民族運動が認められる。 ・第五管理本部には、そうした不満を弾圧、撲滅するための機関が第六局として存在する。 ・第五管理本部には、国内の刊行物すべての管理を任務とする第九局がある。 ・また、ユダヤ人問題で知られた部局がある。ユダヤ人には脅迫的な手段がとられた。 ・アメリカ合衆国をのぞけば、ソ連は世界で二番目に大きい三百万のユダヤ人社会をかかえる。 アエロフロートも国防軍の一環―― «第三管理局» ・KGBには、軍事管理部 «第三管理局» というのがあって、国防軍や民兵組織の監視に当たっている。 ・マルコフを死に至らしめた有毒タンパク質のリシンやバクテリアの毒物を開発したのは、技術研究局に働く科学者たちだといってよい。 ・この機関は、ソ連および衛星国のあらゆる研究施設を押さえ、被害者が自然死したような印象をあたえる毒物、また西側のいかなる科学検査でも発見できない様な殺人機器の開発と改善に当たっている。 ・いきおい、暗殺者や使用する殺人用の機器を検討する第一管理本部執行活動局と緊密な関係を保つことになる。 ４ GRUという名の小さな恐竜 KGBなみの予算を食う強暴な怪獣 ・GRU（ソ連国防軍参謀本部）には、西側の防衛体制、攻撃兵器の両面にわたる軍事機密を入手する任務があたえられている。 ・GRUはまた外国のテロリストを養成している。 ・GRU特殊部隊の要員は、兵力三万人にのぼる特殊部隊の一翼をになう “殺人集団” だ。 ・彼らは西側に潜入し、ソ連が «国家の敵» とみなす人物の抹殺命令を実行する "暗殺者" として訓練される。 ・また «後方攪乱隊» としても編成され、開戦の際は西側に、あるいはソ連が軍事行動を冊する相手国に潜入する任務がある。 軍事機密と戦略にかかわる特殊部隊 ・第二次大戦中、ソ連の最も成功したスパイ、惜しみない賞賛を浴びているリヒアルト・ゾルゲはKGBではなく、GRUの一員だった。 ・一九四一年六月、ナチス・ドイツのソ連侵攻をいち早くスターリンに報告し、また同年十一月上旬、一カ月後に行なわれる真珠湾攻撃の計画を突き止めたのも、東京で活動していたゾルゲのスタッフである。 ・GRUは、五千人を数える本部スタッフのほかに、ソビエト連邦内におよそ十万の要員を擁している。 ・GRU内には二十四の部局があって、それぞれ、特殊部隊員を配置した機関がある。 ・一九六八年のプラハ侵攻、七九年のアフガニスタン侵攻を先導したのは、これら特殊部隊であった。 ・GRUは一九二〇年に設立され、ソ連国防軍の監督下で運営されている。 ５ 対イギリス浸透工作 イギリス王家の周辺にまで浸透した ・ソ連側はイギリスの大蔵省のみならず、全産業にわたってスパイづくりに成功している。 ６ ホワイトハウスから地の果てまで 米国主要都市での諜報活動の拠点 ・一九一七年から、ソ連が自他ともに認めているのは、場所や手段を問わず、世界中にコミュニズムの支配を拡大するという決意であった ・ＫＧＢはその野望を達成するために活用された機関である。 ・主な標的は、アメリカ合衆国である。む ・アメリカ国内におけるスパイ工作の橋頭堡は国連である。ソ連の外交官や要因に完全な自由行動が保証されているからである。 ・しかも、その背後には恐るべき支援部隊がいる。ＫＧＢは、アンテナが林立するワシントンのソ連大使館から工作活動をしている。 ・ＫＧＢの “姉妹スパイ組織” ＧＲＵは、大使館付き陸海空軍武官事務所を中心に活動している。 ・サンフランシスコ総領事館は、戦略的に重要な地点が選ばれている。 ・総領事館員は百人以上で、その七十五パーセントが情報工作員である。 粒子ビーム兵器の機密とＭＸ計画 ・粒子ビーム兵器は制御された核融合を基にしたもので、大量の電子エネルギーを放出する。 ・粒子ビーム兵器は、狙った目標をことごとく無力化し、米ソが依存する現行のミサイル誘導型爆弾、水爆、中性子爆弾を廃物と化してしまうのだ。 盗まれていたマンハッタン計画――ＫＧＢ天国カナダ ・ＫＧＢは、全世界に隠れ蓑となる偽装団体の大規模なネットワークをくり拡げ、その背後で工作を推進している。 ・ヘルシンキにある «世界平和協議会»、ウィーンに本部を置く «国際平和研究所» 、カイロに本部がある «アフリカ・アジア人民会議» 、プラハの «世界労働組合連盟» 、ブダペストの «世界民主生年連盟» 、プラハにある «国際学生同盟» 、東ベルリンに本部を置く «国際婦人民主連盟» 、プラハの «国際ジャーナリスト機構» 、ブリュッセルの本部にある «国際民主法律家連盟» 、プラハの «キリスト者平和会議» 、ウィーンの «国際抵抗運動家連盟» 、パリの «世界科学技術者連盟» 最高の成功を収めた一人ゾルゲ ・ソ連と東ドイツでは、リヒアルト・ゾルゲのスパイ活動を記念する切手が発行されている。 ・ゾルゲはドイツ生れのＧＲＵ将校で、ソ連からすれば、最高の成功を収めたエージェントの一人だった。 ・祖父はカール・マルクスの秘書であった。 ・ゾルゲは戦後、「社会主義労働英雄」という称号を贈られている。 ・ゾルゲは一九四一年、ヒトラーがソ連を攻撃すべく百七十から百九十箇師団の兵力を終結していると東京から打電した。 ・後日、ゾルゲから日本軍が南進するという報告を受け取ると、スターリンはただちに行動を起こし、シベリアに配置していた赤軍の主力をヒトラー侵攻軍の正面に投入したのであった。 ７ 国連にむらがるＫＧＢマンたち 米国が取り込んだ最重要二重スパイ ・その男の ・そして一時の転勤期間を除く十年以上も、CIAからは、アメリカ当局が取り込んだ最も重要な二重スパイ、最も収穫の多い二重スパイと評価されたのであった。 ・元国連副事務総長のアルカジー・シェフチェンコは、グロムイコソ連外相、ブレジネフ書記長の顧問を務め、ソビエト外交界最高の地位ともいうべき特命全権大使に任ぜられたことがある。 ・一九七八年、西側に亡命した最高位のソ連高官となった彼は、国連が「世界におけるソ連の情報工作にとって最も重要な基地となっている」と述べた。 国連を牛耳ったレシオフスキー ・フェドラの経歴はもう一人のKGBマンをありありと思い起こさせる。一時転勤の期間こそあったにせよ、十年以上、国連の内部で測り知れない影響力を持った人物である。 ・名前をビクトル・メチスラボビッチ・レシオフスキーといい、ウ・タント国連事務総長、ついでワルトハイム事務総長の特別補佐官を務めたことがある。 ・八一年六月、モスクワに帰国している。 ソ連にとって国連は利益になる機関 ・ソ連共産党政治局の信任が篤かった、元国連副事務総長アルカディ・シェフチェンコは、なんと国連がソ連にとって最も重要なスパイ基地になっていると述べたのであった。 「ソ連の情報官は国連に送りこまれたトロイの馬だ」 ８ 逆情報工作こそ第一目標 逆情報工作とは何か ・KGBのなかで最も重要な情報工作機関の責任者だった、故イワン・イワノビッチ・アガヤンツ将軍は次のように述べている。 「西側のジャーナリストがわれわれの真意とはまさしく反対のことを書くように、われわれはたえず彼らを仕向けなければならないのだ。われわれの真意を、西欧的な意味合いで ・このような戦術を逆（偽）情報工作という。 ・ソ連共産党の政治局は逆情報工作を非常に重視してきたので、一九七八年三月、KGB内に «国際情報局» というまったく新しい機関を創設した。 １３ 細菌兵器製造工場 ペストから野兎病、炭疽、黄熱病まで ・一九七二年米ソ両国は戦争に用いる微生物の開発、生産、貯蔵を禁止する細菌兵器条約に調印した。条約は七五年に発効し、百十一ヵ国が加盟、批准した。 ・ところが、ソ連は世をあなどるかのように条約を無視してきた。 ・アメリカもまた、ソ連に劣らないあなどり方を見せているといってよい。 ・ソ連には科学生物兵器研究所があり、北極海のフランゲリヤ島でこれらの細菌を強制労働収容所の囚人に使う人体実験が行われたという。 ―― 完 ―― |
