| ★ 評価は、私の独断と偏見でつけたもので、読んだ時点で「ん、これは良かった！」と思った本です。 本そのものの良し悪しとはまったく関係ありません。☆はイチ推し、◎は、おすすめの本です。 |
【最新更新日 ： 2022年3月25日 金曜日 】
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| № | 了月 | 書 籍 名 | 著 者 | 出版社 | 評価 | コメント＆抜き書き |
53 |
21.11 |
悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊１２人  |
谷沢永一 |
クレスト社 |
◎ |
第一章 こんな国家に誰がした ――今も続く、スターリンの呪縛 （１）「悪魔の思想」の誕生 「悪魔の思想」は、なぜ生まれたのか ・日本という国家を、ということはつまり、その本体である日本国民を、かぎりなく、卑しめ、蔑み、そして、劣れる者とみなして罵り、見下し、国益を外国に売り渡す思考方法を、私は、ここに「悪魔の思想」と呼びます。 ・昭和二十年八月十五日、つまり日本の敗戦という大変動を契機として、「悪魔の思想」が言論界の前面に躍り出て、見た目には主流であるがごとき盛況を呈したのです。 ・なぜ、そんな事態となったのか。日本を支配したGHQ（連合国占領軍総司令部）の思惑に基づきます。このGHQの目的とするところは、日本が将来にわたって二度と強い国にならぬように、そのため、日本国民の根性を骨抜きにしておくことでした。 ・GHQは日本を無力な国家とするた、 ・総理大臣にはさまざまな職務がありましょうけれど、歴史を裁定するという重大な権限は総理に委任されてはおりません。 ・村山談話は職務を逸脱した越権と申さねばならぬでしょう。 ・一体全体、こんな日本に誰がした！ わが日本を、こんな国家に誰がした！ ・その犯人は、歴然とはっきりしています。それは「反日的日本人」の群れであり、なかでもそれらの牽引者です。 反日的日本人の正体とはなにか ・反日的日本人とは、純粋の日本人でありながら、わが国の国情と社会の成りゆきと歴史の流れを、非難し攻撃し弾劾する人たちです。その種の言い立てをもって、自分の言論活動の基本方針としている連中です。 ・反日的日本人は、われわれ日本国民のすべてを、貶め、蔑み、罵り、卑しめ、自分を高いところにおいて国民を見下しています。 日本の左翼だけが "国賊" となった不思議 ・世界の共産主義者は階級闘争の敵を憎みますけれども、祖国に対しては愛国者であるのが通常です。祖国への愛が強いからこそ共産主義者になったという例も、けっして珍しくありません。 ・日本だけが例外なのです。わが国の共産主義者だけが、祖国を憎み、祖国の歴史を悪しざまに罵り、国民に軽侮の眼を向け、反日的日本人になるのです。 （３）反日的日本人の聖典――「三十二年テーゼ」 "神のお告げ" となった運動方針書 ・「日本における情勢と日本共産党の任務についてのテーゼ」と題する文書をつくって、日本共産党に授けたのは ・ときに一九三二年四月でありましたから、以後、「三十二年テーゼ」と言いならわされるようになりました。テーゼとは、運動方針書、というほどの意味です。 ・「三十二年テーゼ」の理論の筋道 (1) 共産主義の実現は、人類にとって最高至上なる幸福状態の達成である。 (2) ゆえに共産主義の闘士は、世界歴史が発展してゆく基本法則の見通しを誤りなく立てているのであるから、その世界認識は透徹していて無謬であり至当である。 (3) それら闘士の先頭をゆく職業革命家は、レーニンが太鼓判を捺したように「もっともたしかな、経験に富み、鍛錬された」人たちであるから、絶対の信頼を寄せるに足る。 (4) こういう職業革命家として、闘争の前衛である秀れた人たちをさらに指導する立場にある各国の代表は、これ以上のぞむべくもない最高の全知全能である。 (5) その代表が寄り集って合議のうえ出される国際共産党組織の決定は、現代世界における最高至上の洞察であり指導理論である。 「三十二年テーゼ」が規定した近代日本史とは ・「三十二年テーゼ」の近代日本史に関する論述 (1) 日本は強盗的帝国主義であり、現に帝国主義的強盗戦争をおこなっている。 (2) 日本独占資本主義は絶対主義的な軍事的・封建的帝国主義であり、軍事的冒険主義である。 (3) 日本の独占資本は、いまなお前資本主義的諸関係の緻密な網に絡みこまれている。 (4) 日本の国内には封建制の強大な遺物、農民にたいする半封建的な搾取方法、が認められる。 (5) 日本資本主義は、軍事的・警察的反動の状況のもとで、また国内における封建制の遺物の基礎の上で育ってきた。 (6) 日本はフランスと共にソヴィエトの国に対する出征の発頭人としての役割を引きうけ、反ソヴィエト計画を持っている。 お守りとなった「前近代」と「半封建」 ・日本の学者と思想家と評論家にあまねく受け入れられたのは、前資本主義的、つまり前近代、加えてそのうえ、半封建、という一対の規定でした。 ・もともと、歴史に対するときの当然な批判的姿勢とは、世に残された資料に記されているところをけっして鵜呑みにせず、それが本当に真実を伝えているかどうかを、他の資料と突きあわせて慎重に検討する態度を意味します。 ・つまり批判的というのは方法を指すのであって目的を指すのではありません。 ・批判とは、研究の過程において軽率な判断を避ける心得事なのです。 批判を否定と思いこんだ進歩的文化人たち ・しかるに左翼の論客は根本的に勘違いして、批判とは研究対象である歴史そのものに対して否定の論断をくだすことだと思いこんでしまいました。 ・本来における批判とは、冷静にして中立的な “調査” なのです。 ・大塚久雄を代表とする、前近代史観は、日本人の誰かによる創見ではありません。すべては「三十二年テーゼ」の単なる機械的な復唱にすぎませんでした。 ・日本の左翼人は、ことごとく鸚鵡としての学者渡世を安易に続けました。そうして生まれたのが、近代日本を真黒に塗りつぶす「暗黒史観」であり、「罪悪史観」なのです。 ・なにしろ「三十二年テーゼ」が、日本という国は、強盗、である、と繰り返し、繰り返し強調しているんですから。 ・左翼人が進歩的文化人としての装いをこらし、その行きつくところが反日的日本人としてま陰湿な論調です。 ・日本という国を非難し、日本近代史を攻撃し、日本の国民性を貶める弾劾の論法こそ、彼らの至りついた究極の姿勢でした。 ・そういう方向の議論は、すべて「三十二年テーゼ」の復唱であり言い換えであったのです。 （４）ソ連の呪いがかけられた国・日本 日本以外の国に、ソ連はテーゼを連発しなかった不思議 ・ ・ところが、国際共産党組織は世界の先進国のどの国の共産党に対しても、その国の社会を論議したり運動の進め方を指示したりなど、そんな出過ぎた真似はしておりません。日本に対してだけ国際共産党組織は例外的に大きく身をのりだして、何回も何回も ・方針書を ・国際共産党組織の主要な任務は、日本共産党を監視し、教育し、 日本への恐怖が生んだ「三十二年テーゼ」 ・国際共産党組織が発行した文書の数量と継続性から見るとき、国際共産党組織の課題とする行動の優先順位の第一は、実質的には、まさしく日本問題であったと考えられます。 ・当時の共産主義ソ連は、すなわちスターリンは、諸国がソ連に攻めかかる際に、日本こそがその先兵の役割を担うと信じていたのです。 ・ソ連が日本をひじょうに恐れていたことは事実のようです。 ・ゆえにソ連を防衛し安全を確保するためには、なにがなんでも日本の国内を大混乱におとしいれ、できることなら革命を惹き起こさなければなりません。 ・したがって、日本共産党が性根をすえて階級闘争を闘ってくれる大波乱が、祖国を守りくため絶対に必要な第一の課題となりました。 ・そこで、日本共産党に対する必死の梃入れがはじまったのです。 ・国際共産党組織が、いちおう、国際、という ・そのソ連が、日本恐怖症にかかっているのである以上、国際共産党組織は国際主義ソ連の意向 的中したスターリンの思惑 ・「三十二年テーゼ」の理論構想が築きあげられた動機。 ・まず第一に、日本国内に大混乱が起こるように仕向け、日本の国力を可能なかぎり減退させること、 ・第二に、スターリンは政治の悪魔的な天才でしたから、日本の国力をいやがうえにも減退させるため、国力を根底でささえる国民の気概を弱め、自信を失わせ、士気低下させ自尊心に傷を負わせ、知勇をおとろえさせようと企みました。国民を意気喪失におとしいれようと計ったのです。 ・その狙いは大部分で不発に終わり、一部分では成功したと言えましょう。 ・「三十二年テーゼ」の毒はよく効いたし、今もまだその効能は続いているのです。 すべてのロシア人が日本を怨み憎んでいた ・第三に、スターリンに、日本を極度に罵倒する発想を促した情念は、日露戦争の敗北を深く根にもつ恨みと、憎しみと、復讐心でした。 ・戦敗国である日本は戦勝国をけっして恨んでいませんが、こういう万事を水に流す精神的処理法は、ほとんどわが国だけの特産物であって、日本を除くあらゆる国においては、敗戦を怨みの種として忘れないのが通例のようです。 ・人間の恨みは深くはげしくいつまでもくすぶって、ときに歴史を大きく動かすのではないでしょうか。 ・ロシア人のすべては、日本をふかく恨み憎んでいたのです。それには無理からぬ事情があります。 ・有史以来、ロシアはいまだかつて一回も戦争に負けたことのない常勝国なのです。 ・その光栄ある腐敗の祖国にただ一回だけ ・ロシア人にとって、日本だけは、世界中で、まったく別の、徹底的に厭うべき国と映ります。 ・明治三十八年から数えて四〇年あまり、ロシア人は復讐心を燃やしつづけてきました。 ・できることならば日本および日本人を呪い殺し、この世から抹殺し消滅させたい。この根ぶかい怨念を考慮に入れずに日露の歴史は語れません。 ・昭和二十年八月十五日以後も戦闘をつづけて日本軍を追いつめたこと、五七万数千の日本人捕虜を無法にも酷寒のシベリアへ連行し、無慈悲な強制労働を課して五万数千もの死者を出したこと、ポツダム宣言を無視して北方領土を占領したこと。これらの ・まったくもってスターリンの言ったそのとおりなのです。ロシア人はこのとき、ついに日露戦争の仇を討つことができたんです。 ・この間の事情を、日本人は因果関係の連鎖として理解すべきではないでしょうか。 ・そのような怨念と憎悪と復讐心が、胸の底でくすぶっているロシア人によって起草されたのが「三十二年テーゼ」です。 ・しかも大綱を指示したのが復讐論者のスターリンです。 ・「三十二年テーゼ」は、日本人の根性をくじくために送りつけられた毒薬であること明々白々でありましょう。 人種差別という生理的反応を見逃すな ・第四に、白色人種であるロシア人の黄色人種である日本民族に対する人種差別の蔑視が、これまた奥底で大きく作用しています。 ・司馬遼太郎の『坂の上の雲』で曰く、 「ニコライ二世は、平素、日本および日本人ということばが出るとき、「猿」というあだなでよんだ。ウイッテによれば公文書にまでこの皇帝は「猿」とかいた」 ・人種差別という生理的反応の根ぶかさから眼をそらしてはなりますまい。 ・近代資本主義をつくりあげることができたのは白色人種だけであるという思いこみが、彼らの間では常識として共有されています。 ・劣等種族である黄色人種が自力で近代化できるはずがない。 ・しかるに、その金輪際ありえない奇蹟が起こったのです。 ・黄色人種の中で日本人だけが、あるまいことに日本人だけが、しかも他国の援助によってではなく、まったくの自力で近代化をなし遂げたのです。 ・この固定観念に発する疑惑に基づいて「三十二年テーゼ」が起草されました。 ・第一、日本を混乱におとしいれるための扇動。 ・第二、日本人の精神を骨ぬきにするための弾劾。 ・第三、日本に対する復讐心を満たすための中傷。 ・第四、人種差別の意識に発する日本社会 ・これら四つの要素によって ・そしてその光源と目されるものは、日本よ弱くなれ、と祈るスターリンのおどろおどろしい呪いなのです。「三十二年テーゼ」はスターリンが日本にかけた呪いでありました。 ・その「三十二年テーゼ」に平伏して復唱している左翼人、進歩的文化人、反日的日本人、彼らは、かけられた呪いのままに機械的に動く呪術人形であると見なしうるでしょう。 ‹戦後民主主義の理論的指導者・丸山眞男への告発状› 第四章 国民を冷酷に二分する差別意識の権化 国民を弾劾しながら東大教授を辞めない破廉恥 ・自由には責任がともないます。 ‹反日的日本人の第一号・横田喜三郎への告発状› 第五章 栄達のため、法の精神を蹂躙した男 ・東京裁判は無理矢理に行なわれた なぜ、東京裁判が私刑なのか ・この極東国際軍事裁判所には決定的な弱味がありました。裁判の準拠すべき法律があらかじめ定められていない、という “弁慶の泣きどころ” のように難儀な問題です。 ・戦争犯罪人なるものを裁くべき法律が世界中どこにもないのです。これでは裁判は成立しません。 ・法の精神の根本には、事後立法は無効であるという牢固とした概念が据えられています。 ・この世界的に確実に認められている原則を踏みにじって行われようとしているのが東京裁判でした。 ・法律がないのに、あとから理屈をつけて、死刑という極刑を含む裁きを行なう。これはもはや裁判ではありません。西部劇に出てくる私刑というものです。 倒錯の理論による「東京裁判」の正当化 ・法の根本は公正にして遺漏なき手続きの厳守でしょう。 ・たとえば新旧共産主義諸国において通有であるように、法律の条文がどれほど見事に整っていたにしても、その運営の手続きが共産党の強権で勝手気儘に左右されている場合は、本来の民主主義的な法治国家とは申せません。 ・法律の生命は、「形式上のささいな不備」などけっしてあってはならないと、当事者自身が注意する最新な運用の自戒によって保たれます。 反日的日本人の戦後第一号 ・東京裁判という茶番の私刑が行なわれたとき、それを見ていた日本人にはほぼ三とおりの型があったと見ていいでしょう。 ・その第一は、戦勝国が寄ってたかって拠るべき法律もないのに敗戦国の人びとを裁く法的に違法な復讐の儀式を苦々しく眺め、憎んでいた人たちです。 ・その第二は、勝った国が勢いに乗じて勝手気儘にやる合法的殺人行為を押し留めるだけの力がこちら側にないゆえ仕方がないけれど、罠にはめられたわが国民の被告は、まことに気の毒だからその刑が少しでも軽くすみますようにと、心ひそかに願っていた人たちです。 ・その第三は、東京裁判を大歓迎し、同朋である被告がなるべく多く、できるだけ厳しく裁かれるようにと期待した人たちです。 ・横田喜三郎は、その第三種のとびぬけた代表であり、反日的日本人の戦後第一号でした。 ‹「進歩的インテリ」を自称する道化・久野収への告発状› 第七章 恫喝が特異な権力意識の化身 「戦争中の日本だけが共産党を疎外した」という大ウソ ・日本共産党は ・国際共産党組織は、共産主義の祖国であり根拠地であるソ連の国益を守るための組織ですから、日本共産党はソ連の日本支部であり、すなわちソ連が日本の中に設置した出先機関なのですから、わが国の内部に巣喰うこの癌細胞の活動を停止させる措置は、日本にとっては遅滞を許されない応急の手当であったこと、言うまでもありません。 「天皇制」に対する強固な怨念 ・日本共産党は、左翼の用語で言う「天皇制」を単に「批判」したのではなく、天皇制打倒、この ・論理のうえで、思想のうえで「批判」したのではなく、暴力によって打倒するのが目的であり、すなわち武装蜂起の企てを秘め、内乱の萌芽でありました。 スパイ行為を肯定する売国奴 ・久野収の教理 「自分の理想を実現するために他国の便宜をはかる行為をスパイと呼ぶのは間違いである」 ‹進歩的文化人の麻酔担当医・加藤周一への告発状› 第八章 祖国をソ連に売り渡す “Ａ級戦犯” 言論の上で、いかなる詐欺行為も辞さない人物 ・帝政ロシアおよび共産主義ソ連が、軍事力において自国より劣る隣接諸国に、完全な中立と友好を認めた例は絶無です。 ・もし、わが国が厳正中立という妄想にかられ、日米安保条約を廃棄したら、ソ連にとってはそれこそ涎のたれる結構な贈り物となったでしょう。その場合は、ソ連がただちに進駐してきて日本を占領したであろうこと間違いなしと、私は考えます。 ‹マスコミを左傾化させた放言家・向坂逸郎への告発状› 第十章 最も無責任な左翼・教条主義者 ドン・キホーテの論法 ・世界戦争の原因がアングロ・サクソンの有力諸国家による弱い者いじめのブロック経済であった、という簡単な常識さえ身につけていません。 ‹現代の魔女狩り裁判人・坂本義和への告発状› 第十一章 日本を経済的侵略国家と断定する詭弁家 噴飯ものの自衛隊廃止論を唱える国際政治学者 ・自衛隊は要らん、防衛費の支出はやめろ、という類いの自衛隊無用論は、言い古されて一向に珍しくありません。その場合、表向きの言立ては厳正中立論でした。 ・しかし、肚の底の真意は建て前とはまったく別の方向なんです。つまり、日本列島をすっぽんぽんの丸裸にしておいたら、共産主義ソ連が攻めてきやすいだろうと期待する、ひそかなお膳立ての企みでした。 ・社会党委員長であった石橋政嗣は、ソ連が攻めこんできたら降伏したほうがよいではないかと、『非武装中立論』に降伏の勧めを書き記しています。誰もが胸の底に隠しておいた秘策を、堂々と自分から公表したのです。 ・坂本義和は正当な選挙で国民から選ばれた政治家を心の底から軽蔑しているのですから、そういう阿呆な政治家を国会におくりだした国民の大多数を、度しがたい馬鹿だと見下していること確実です。 ・思えば、左翼人は必ず賢者の 朝鮮戦争は「解放戦争」なのか ・氏へのインタビュー 「朝鮮戦争を考えてみますと、あの時期には中国で革命が成功して、あと台湾の解放だけが残っているという状況でした。その時に朝鮮戦争が起こったわけですが、北のほうが少なくとも用意周到に戦争の準備をしていたということは間違いない。しかし、だからといって、それは「侵略戦争」だったということではなく、一種の「解放戦争」という意味を少なくとも北側で与えていたということは、その通りに受け取っていいと思います」 ‹進歩的文化人の原型・大塚久雄への告発状› 第十三章 近代日本を全否定した国賊 戦後進歩的文化人の最初の原型 ・「人類の経済生活或ひは社会の経済的構造は悠久な世界史の過程の裡にあつて、幾つかの発達段階を経過してゐる。大づかみに言へば、古代アジア的、古代奴隷制的、中世封建的、近代資本主義的の諸構造段階がそれである」 ・要するに、型どおりの唯物史観に基づく構想らしいのです。 ・「近代化という語について……私のばあいには……資本主義以前の社会諸形態のどれか一つから資本主義へだけでなく、社会主義への移行を認めるようなものだったのである」 ・終戦直後の大塚久雄は日本が「社会主義への移行」を果たすよう心の底で願っていました。大塚久雄は生粋の社会主義者であり、共産主義者としての信念を持していたのです。 艶やかな表皮につつまれた毒饅頭 ・一般世間に顔出しするときには、社会主義者であり共産主義者である ・日本を社会主義化しようなんて不作法な直接話法をもって突出したりせず、社会構造の発展段階について考えてみよう、という風な思い入れの姿勢をとります。 ・のちに歴史学研究会は、世界史の発展法則、という便利な ・この毒饅頭の外側を ・天皇制打倒、などというなまなましい叫喚は口が裂けても発声しません。その代わりにもの静かな低音で、民主主義の根幹をなす完全なる平等の理念は検討に値する、という類いの思想的課題を沈思黙考します。 左翼に独占された戦後出版界 ・大部数ではないにしても一応は売れた戦後進歩的文化人の著作は、社会主義への、共産主義への期待を昂揚させたのでしょうか。 ・事実はまったくの逆でした。革命への関心はなだらかな坂道をゆっくりくだるように鎮静へと向かったのです。 ・進歩的文化人の果たした貴重な役割は、左翼への関心をおのずから薄れさせ、読者をしだいに興奮から醒まし、国民としての良識に落ち着かせるという望ましい静謐化でした。 進歩的文化人に共通する語法とは ・事柄がそのような落ち着きへと推移した理由は戦後進歩的文化人の論法が直截型ではなかったからです。 ・事柄を明確に表現しないで、ほのめかし、言いくらまし、あてこすり、いやがらせ、皮肉、いやみ、難解、野次、持ってまわった曖昧な言立て、そういう迂回作戦をとりました。 ・そもそも社会主義・共産主義は政治変革の理論です。政府を打倒するために企む革命の戦略・戦術です。現実に政権を奪取するために方針を練る戦いの工夫です。すなわち、政治闘争の青写真です。 ・ところが、わが国の戦後進歩的文化人は社会主義・共産主義から闘争の原理を抜きとり、もっぱら社会主義・共産主義に対する憧れの気分だけを世に広めようと考えました。 ・なぜなら、彼らのひとりのこらずが自力で日本に革命を実現する意図も意欲もなかったからです。 ・連中にとっての社会主義・共産主義は、それを口実として論壇に自分の座を確保するための処世術だったのですから、どうしてこの日本に革命を起こすかなんて、そういう物騒な議論は頭から願い下げです。 ・そこで、革命については考察しない、配慮しない、議論しない、計画しないという暗黙の諒解が成りたちます。 ・説教師である自分たち自身、革命を遂行する気は毛頭ないのですから、当然のこと、信徒に革命の勧めを説くわけにはいかないでしょう。 ・そこで、革命なんて危険な命題は棚あげして、社会主義・共産主義に対する憧れの気分だけを醸しだすという手にでました。 ―― 完 ―― |
